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フクロモモンガ 代謝性骨疾患

2025.09.24

フクロモモンガ 代謝性骨疾患(MBD:Metabolic bone disease)

現在、フクロモモンガの正確な栄養要求量は解明されていません。それに加えて、フクロモモンガは偏食する個体が多いため、不適切な食餌内容による栄養性疾患が時折みられます。フクロモモンガの栄養性疾患の代表に代謝性骨疾患(MBD:Metabolic bone disease)があります。MBDとは主にカルシウムの代謝異常で引き起こされる骨の病気の総称で、骨異栄養症とも呼ばれています。フクロモモンガのMBDは主に栄養の不均衡、特にカルシウム・ビタミンDの不足やリンの多い食餌が原因とされています。

症状

・骨格の変形による異常姿勢
・四肢の弯曲による歩行異常→筋肉量の低下による体重減少
・後肢の不完全麻痺、起立不能
・病的骨折
・骨盤腔の狭窄による便秘、腹部膨満
・栄養状態の悪化による被毛粗剛
・低カルシウム血症による発作、虚脱

正常姿勢

骨格の変形による異常姿勢

後肢の不完全麻痺

起立不能

診断

下記の検査を組み合わせて総合的に診断します。

検査 検査内容および目的
問診 飼育環境や食餌内容の確認
身体検査 体格や姿勢・歩様の確認、四肢の弯曲の有無
レントゲン検査 骨密度の低下、骨盤や背骨の変形の確認、消化管のうっ滞・便秘の有無
血液検査 血液中のカルシウム・リン濃度(採血に麻酔が必要になる場合が多い)

正常レントゲン像

骨盤腔の狭窄と腹部膨満

骨密度の低下

治療・予防

治療は主にカルシウム剤の注射や内服を行います。軽症や幼体であれば食餌内容の改善やカルシウム剤の内服で改善することがありますが、成体や重篤な骨変形(骨盤腔の狭窄など)がある症例では完治が難しい場合が多いです。カルシウム源としてサプリメントも有用で、鳥類や爬虫類用のものが利用できます。フクロモモンガは夜行性のため、骨を形成するために必要なビタミンDを日光(紫外線)から合成するよりも食餌からの供給に依存しています。そのため、MBDの個体ではビタミンDが配合されているサプリメントが推奨されます。

後肢の不全麻痺や歩行異常がある個体ではタオルなどの床材や寝袋に爪が引っ掛かり自力で外すことができなくなることがあり、骨密度が低下している個体では病的骨折が起こりやすいので注意が必要です。また、飼育ケージはバリアフリーであることが望ましく、立体的な金網ケージではなく平面的な大型のプラスチックケースや爬虫類用ケージなどで、ある程度運動制限ができる大きさのものを用います。低カルシウム血症による消化管蠕動の低下により下痢や便秘が生じた場合は、それらの対症療法も行う必要があります。

一度変形してしまった骨は完全に元の状態に戻すことは難しいため、日頃から食餌による予防が重要です。また、初期や軽度の場合は症状を見逃しやすいため、健康診断でのレントゲン検査をお勧めします。